沖縄県 与那国町 Yonaguni, Okinawa  ANA FURUSATO  Payment of taxes

日本最西端、与那国島のパクチーは 古くから親しまれる“島民食”

沖縄本島から約650km離れた与那国島は、東京から交通機関で行けるもっとも離れた場所だ。訪れたのは1月の真冬だというのに、日差しの暖かさに驚かされる。南国の野菜として知られるパクチーだって、この土地では冬の味覚なのだから。
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クシティ農家 松村 嘉永さん

パクチーではなく、“クシティ”。 古くから受け継がれる与那国の食文化

与那国島は日本最西端の地。島の西側からは台湾の山々の稜線が望め、冬でも気温が20度を超える暖かさである。うららかな島で育まれる名産は、パクチー。ここ与那国では“クシティ”と呼ばれていて、古くから親しまれているのだそう。

お邪魔したのは、島の中心部からほど近いクシティ畑。「4835番、ここは与那国の一番最後の住所だよ」と松村嘉永さん、御年87歳。傍らには、妻の淑子さんがにこやかに寄り添う。

「もともとここは苗代(稲の苗床)だったんだよ。クシティの畑にしたのは10年くらい前かな。ブームで内地から引き合いがたくさん来てね」(嘉永さん)

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おふたりも小さいころからずっと食べていたのだそう。新芽の状態で刈り取るのが与那国流。普段食べるパクチーが香り付けに料理にまぶす程度なら、与那国のクシティは葉も茎も柔らかく、サラダにしてそのままいただくのがオススメだという。

ならば、とばかりに畑のクシティを手でむしって頬張った。芯の柔らかさに驚く。そして何より、香りがすがすがしく、ほんのり塩味も感じる。

「潮風が天然のスパイスだから」と淑子さんは笑った。

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クシティ農家 松村 淑子さん

クシティは冬の味覚。 産地ならではのアレンジでどうぞ

「缶詰のツナを載せてドレッシングをかけて食べますよ。あとは和え物にしたり」(淑子さん)

フワフワで柔らかく、おいしい。パクチーがダメでも、クシティなら食べられる人が多いと聞いたが、それも納得だ。

「ヤギみたいでしょ(笑)」と役場の上地常夫さんはいう。「コレ食べてみてよ」と、淑子さん特性のクシティのペーストをご相伴にあずかった。

「作り方は簡単よ。キレイに洗って水切りしたクシティとたっぷりのオリーブ油とニンニクを一房と、塩をひとつまみ。それをミキサーにかけるだけ。パンを焼いて載せてもおいしいよ」(淑子さん)

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クラッカーにディップしていただくと、今度は濃密なクシティの香りが口いっぱいに広がる。ふるさと納税の返礼品で作ってもらえれば、と考案したばかりだとか。パスタなどに和えるのもいいアイデアだろう。日常的に食べられる産地ならではのレシピだ。

「正月の味だよ」とおふたりは言う。新芽が出る年末から年明けにかけてが、クシティの旬なのだという。花が咲くころには茎が堅くなってしまうため、島ではあまり食べなくなるそうだ。

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与那国町役場 上地 常夫さん 与那国町役場 大田 倫子さん

マリンアクティビティに新鮮な海の幸。 最西端の離島の魅力

「このおいしさを全国の人に知ってもらいたいと思っています」

役場の上地さんは語る。台湾からほど近い土地ゆえ、台湾の食卓に上るクシティも、与那国で愛されてきたのだそう。福岡から移住し、役場で働く大田倫子さんもその味わいに魅せられたひとりだ。

「日本の“元祖”は与那国だよってアピールしたいですね」

クシティのほかにも、長命草や黒糖、カジキマグロといった産品もある。また、与那国ならではのアルコール度数60度の泡盛“花酒”も人気。いずれもふるさと納税の返礼品だ。

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「最初は生産者さんも恐る恐るでしたが、いざ始まると積極的になりましたね。泡盛の古酒の18升の壷が出たこともあります。あとはエビも人気です」(大田さん)

「このあたりはカジキの漁場になっていて、年間1000本くらい、トローリング(一本釣り)で釣ります。釣ったその日に水揚げして、翌日には九州の市場に出回る新鮮さですよ」(上地さん)

トローリングは釣りの愛好家にも人気だ。与那国は、マリンレジャーが楽しい場所。

「古代遺跡という説のある与那国島海底地形など、ダイビングはとくに人気ですね。与那国馬という在来種の乗馬体験もできます。もっと与那国のよさを知って、全国の方に来ていただくことが目標です。そのために、特産品の掘り起こしや施設の充実を目指しています」(上地さん)