北海道 白糠町 Shiranuka, Hokkaido  ANA FURUSATO  Payment of taxes

北海道の生乳で本場の味を。全国から学びに集う、白糠町のチーズ工房

ご存じのように、北海道は酪農が盛んな土地。雄大な地で育まれる牛の生乳は、新鮮でとびきりの味わいだ。しかし、それを使った“本物”のチーズ作りの歴史は、実は古くない。白糠町で出会ったのは、そんな状況を憂い、本場の技術を真摯に学んだチーズ職人だった。
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白糠酪恵舎 代表取締役 井ノ口 和良さん

チーズ作りに試行錯誤はいらない。長い歴史に学べばいい

北海道の東部、釧路からほど近い場所にある白糠町。この地で、イタリアの製法を16年間頑なに守ってチーズを作っている、酪恵舎という工房がある。

「当時僕は、公務員としてこの地域の酪農家に技術指導をしていました。北海道には美味しい牛乳がある一方、乳製品の文化が少なかった。けれど、地域の中でチーズ工房を望む人が多かったのです」

こう振り返る井ノ口和良さんは、イタリアに渡ってチーズ作りを学んだ。モッツァレラはカンパーニャで、熟成チーズはピエモンテで技術を勉強したという。当時の日本では、イタリアのチーズ作りの技術があまり知られておらず、現地で学ぶ日本人はほとんどいなかったそうだ。やがて公務員の職を辞し、地元の有志とともに酪恵舎を立ち上げた。

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「ヨーロッパのチーズはおよそ2000年にわたり作られているので、試行錯誤しなくても、そこからしっかりと勉強すれば十分なんです。本場の技術書は極めて正確ですから。唯一違うのが、日本とイタリアの生乳の味わい。その点は、研究しないといけませんでした」

こうして生まれたチーズは、白糠町を中心に親しまれている。地元で育まれ、地元で楽しまれないものが都会で消費されることに疑問を抱いたのがその理由。酪恵舎のチーズをパンに乗せた「ハイジパン」は、地元の子供たちなら誰もが知るソウルフードだ。井ノ口さんは、チーズ作りを通して地元に貢献したいと考えている。

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いかにいいものが作れるか。 職人にとって一番大事なこと

「この町の人口は8000人ほどです。高校を卒業しても地元に就職先がないから、みんな都会に出て行きます。そこで酪恵舎のチーズに再会したら、その瞬間に都会は“知らない町”じゃなくなると思うんです。ふるさと納税などを通じて、こうした形で町を出た人たちを勇気づけられるかもしれない」

そんな思いを抱いて用意したふるさと納税の返礼品は、いわば地元の味なのだ。口溶けがよく優しい味わいの「トーマ・シラヌカ」、マイルドでねっとりとしたコクが自慢のウォッシュチーズ「ロビオーラ」、モッツァレラを熟成して作る、フレッシュながら熟成味を感じる「スカモルツァ」などの盛り合わせ。いずれも生乳本来の風味が生きていて、みずみずしく、香り高い逸品だ。

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「毎朝酪農家のもとに仕入れに行くときは、細心の注意を払ってゆっくりと搬入します。揺らすと微細な脂肪球が破け、生乳が傷んでしまいますから。生乳の本質は、母親の優しくて強い愛。それをどうやってチーズに残していくかを、常に考えています」

十数人の従業員が、それぞれの持ち場で、本場イタリアの工程でチーズ作りに専念する。彼らの出身地は様々で、全国からこの場所にチーズ作りを学びに来ているそうだ。工房の高い技術がうかがえるエピソードである。

「一番大事なことは、生乳に向き合って、いかに美味しいチーズを作るかということです。守りに入って『今日はつまらないものを作っちゃったな』と思うか、こだわりを持って納得のいくものが作れるか。正しい技術で挑戦を続けながら、美味しい“食べ物”が作れたら、それが一番ですよ」

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白糠町役場 企画総務部 佐々木 康行さん

白糠の食材でフルコースを。役場職員の熱い思い

「白糠町には海も山もあって、素晴らしいものがたくさんありますから、ふるさと納税はぜひやるべきだと考えていました」

こう語るのは、白糠町企画総務部の佐々木康行さん。制度への参画は平成27年のこと。チーズに海産物など、返礼品は幅広くラインナップされている。

「事業者のみなさんは本当に白糠への愛が強くて。ふるさと納税を通して、地元の産業振興にも繋がればと考えています」

そして一番の目標は、ふるさと納税を通じて、そこから移住者を増やすことだという。全国的な人口減少の波に、この町も例外なく直面しているのだ。

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「きっと白糠町をご存じない方が多いと思うんですよ。まずはいろんな方にこの町のことを知ってもらおうと。実は、しそ焼酎『鍛高譚(たんたかたん)』の紫蘇が作られている場所なんです」

さらに、訪れて知ってもらうために、エゾ鹿ハンティングや船釣り体験など観光型の返礼品も用意している。

「これまで観光誘致に積極的ではなかったのですが、お越しいただければ、美味しいものがたくさんあるし、体験できる魅力だって少なくありません。『こんな町があったな』と、ちょっと立ち寄っていただけるとうれしいです」